芸術家、哲学者、詩人…様々な顔を持つ伝説のアーティストがいた。
ディオールのメイクアップラインを手掛けたのち、資生堂にてコスメティックやフレグランスのアーティスティックディレクターを務めた彼の名は、セルジュ・ルタンス。
香り。それは触れることの出来ない幻影のようでいて実体でもある、深みのある存在。
香りとは、私たちの影である。
贅沢な蜃気楼、私たちの投影像、典雅な舞・・・
それはまるで内に秘めた宮殿のような、甘美なクリスタルの世界なのである。
今回は、創業者の圧倒的な個性が光るフランスのフレグランスメゾン、SERGE LUTENS(セルジュルタンス)から、霞のように儚い香水「L’orpheline(ロルフェリン)」をご紹介したい。
気体の宝石と呼ばれるフランスのフレグランスメゾン「SERGE LUTENS(セルジュルタンス)」とは
究極の美しさを求めた、ダークで艶やかな世界観。時に理解が及ばないほどの“ルタンスワールド”を堪能する
SERGE LUTENS(セルジュルタンス)は、他の追随を許さない創業者の圧倒的な感性から生まれた、もはや詩集とも呼べるほどの美しい世界観を作り上げているフランスのフレグランスブランド。
香りの高い完成度はもちろん、その詩的なディスクリプションや作品に込められたテーマに唯一無二の表現を貫いている。
今回は、数ある名作の中から特にこれを欠いてはルタンスは語れまいと思う作品をはじめ、
筆者が特に美しいと感じた香水をひとつピックアップしてご紹介できればと思う。
SERGE LUTENS(セルジュルタンス)は、2000年頃にメイク・ヘア・ジュエリーなど創業者の多岐にわたる経験から生まれたフランスのフレグランスメゾン。
ブランドを代表する「コレクションノワール」をはじめ、アクアティックノートといった比較的軽めで使いやすい香りで構成された「マタンルタンス(セルジュルタンスの水)」、ルームフレグランスを中心とした「アットホーム」などを展開している。
香りの完成度もさることながら、幅広いシーンや好みに対応できるシリーズラインナップも魅力である。
個人的には、ルタンスは黒の美しさを知っているブランドだと思う。
マタンルタンスといった軽めのラインナップであってもそれは変わらず、コンセプトやテーマのどこかに影のある艶やかさを秘めている。
それは例えば、一般的に良しとされている慣習や、美しいとされてきたものへの真正面からの抵抗。
清らかであることこそが、本物のリュクス。
そんな定説に終止符を打つ、独創的でモダンな、深淵の水。
マタンルタンスシリーズの一節だけ見ても、ルタンスの美に対する潔さや信念が伝わってくる気がする。
(マタンシリーズでこれなのだから、コレクションノワールにおいては言うまでもないだろう)
SERGE LUTENSはこちらから
画像出典:SERGE LUTENS 公式サイト
・ダークで艶やかな世界観を、完璧なまでに美しく、香りや詩的な表現に落とし込んだブランド。豊富なラインナップも魅力
ルタンスを語る上で欠かせない作品
ここでは、セルジュルタンスをもう少し深掘りして、現在のルタンスとしての表現に大きな影響を与えたと思う作品や人物を中心にご紹介したい。
画像出典:朝日新聞デジタル
資生堂のビジュアルアイデンティティを担ったセルジュルタンスの作品のなかで印象深いのが、モデル・山口小夜子との共演。
当時資生堂の広告塔を務めていた山口小夜子とセルジュルタンスの出会いは、ブランドの世界観の確立において大きなターニングポイントになったのではないかと思う。
時にはモデルを気絶させるほど徹底的に、その完璧な世界観を実現しようとしたルタンス。
日本人形のようなおかっぱと切長の目が生み出すエキゾチックな東洋美で当時世界中の人々を魅了した山口小夜子と共に作り上げた広告は、カンヌ映画祭で金賞(金獅子賞)を受賞するほど。
画像出典:カイエ・デ・モード
女らしい人が突然男っぽくなったり、美しい人が突然醜くなったり、醜い人が突然美しく見えたりといったその一瞬。
この言葉を読んで山口小夜子も、ルタンスの作品における翳りのある美しさや艶やかな官能と
共鳴する部分をたくさん持っていたのではないだろうかとつい思いを巡らせてしまった。
当時の作品から、ルタンスの美学を感じていただけたらと思う。
他に特筆すべき作品があるとしたら、ルタンスが資生堂時代に手がけた幻の香水「ノンブルノワール」ではないだろうか。
画像出典:Profice
1981年に発表された、今では滅多に使われない動物性香料ムスクを使った名香。
肌馴染みがよく、それでいて艶やかな表現は、現在のセルジュルタンスにも感じられる要素である。
最後に、筆者がセルジュルタンスの中でも特に好きな1本をご紹介したい。
灰の乙女と名付けられた香水「L’orpheline(ロルフェリン)」
ティーノートのような受け入れやすさのある、儚くて繊細な香り。
SERGE LUTENS(セルジュルタンス) L’orpheline(ロルフェリン)
パウダリーでティーノートのように優しく繊細な香り。肌にすっと馴染みながらも艶やかな印象に感じるのは、人肌に近い香り立ちの香料(ビーバーの香嚢由来の香料、海狸香=カストリウム)を使っているからだろうか。
伽羅、白檀といったインセンス(香木)系のウッディと人肌のようなムスク、カストリウムが非常に綺麗なハーモニーを生んでいる。
ウッディ、ムスク系が好きな人には是非おすすめしたい1本。
参考価格:17,710円税込
※2024年2月27日時点の情報です。
最後に
画像出典:SERGE LUTENS 公式サイト
今回は、SERGE LUTENS(セルジュルタンス)のブランドストーリーとおすすめ香水についてご紹介した。
筆者も圧倒的な感性と作り込まれた世界観に深く魅了されてしまった一人であるが、ルタンスとの出会いが、今まで選んできた香水とは違う感覚を運んできてくれたなら嬉しく思う。
SERGE LUTENSはこちらから
画像出典:FASHION PRESS